わが国には最高裁判所をはじめとして、簡易裁判所まで含めると全国に500箇所以上の裁判所が設置されており、そこでは日々判決が下されています。しかし判例として判例集、判例登載雑誌、判例データベース、裁判所Webサイトに掲載され、その全文を見ることができるのは、そのなかのごく一部です。 判例を検索する際にはまず、すべての判例が見られるわけではないということを念頭に置く必要があります。現在では、判例集に登載された判例のほとんどをウェブ上で見ることができます。
判例を収録する電子資料には無料のウェブサイトの他、早稲田大学が契約して提供している契約データベースがあります。 契約データベースには、判例はもとよりその判例に関連する法令や、関連文献を調べることができるなどの、無料のウェブサイトにはない便利な機能がついています。 また、雑誌の全文を読むことができる場合もあります。
行政府等の公的機関が作成するサイトと、企業や個人が作成するサイトがあります。作成者の特定ができないサイトからの情報は信頼性が低いですから、参考程度にとどめ、引用して使うのは避けましょう。
「裁判例検索」より検索可能。「最高裁判所判例集」「高等裁判所判例集」「下級裁判所判例集」「行政事件裁判例集」「労働事件裁判例集」「知的財産裁判例集」の項目別検索と、すべてまとめて検索できる統合検索がある。 「最近の裁判例」では最短で判決日当日に判例が掲載される場合もあり、他のデータベースに比べて最も速報性がある。 判決文の主文と理由のみPDFで公開されており、当事者名は仮名処理されている。Judgement of the Supreme Courtsのページでは昭和25(1950)年以降の一部の判例を検索し、英訳を読むことができる。
裁判所の新着判例を月別の一覧で掲載し、判決書をHTML版とText版で公開している。
データベースごとに収録数や、更新時期が異なりますが、雑誌の最新号がデータベースに収録されるまでには、通常1ヵ月程度かかります。いずれのデータベースもキーワード検索が可能ですが、「裁判年月日」と「裁判所名」あるいは「民集61巻5号2215頁」といった「引用」が分かっていると、容易に判例を探すことができます。学外から使う場合は「学外アクセス」のページからログインしてください。
公的判例集では公開されない独自取材の判決を多く登載している。データベースにログインして、「判例」タブを選び、「条件検索」サブタブから検索を開始する。キーワード検索では「同義語の検索」により網羅的な検索が可能。冊子体の引用が分かる時は「出典」から検索する。頁まで指定が可能。「新判例体系」サブタブでは法条や論点から、「索引検索」サブタブでは裁判所一覧から判例を検索できる。検索結果の「解説」タブからは『判例タイムズ』『ジュリスト』他の解説全文が読める。
明治28年の大審院の判例から、今日までに公表された判例を網羅的に収録した判例全文情報データベース。 データベースにログインして、「判例総合検索」から検索を開始する。キーワード検索では「同義語設定」により網羅的な検索が可能。冊子体の引用が分かる時は「掲載文献」から検索するが、頁の指定はできない。画面を戻るにはブラウザの戻るボタンは使わず、LEX/DBインターネットのロゴの下に表示される画面表示で戻る。データベース上で読める解説は少ない。
データベースにログインして、「判例体系」を選び「検索画面へ」ボタンから検索を開始する。キーワード検索は「フリーキーワード」を使う。「事項」では判例要旨中の重要な語句や、判例要旨・本文には含まれていない概念や用語を使って検索可能。冊子体の引用が分かる時は「出典」から検索するが、頁の指定はできない。「フリーキーワード」「事項」「出典」ともに、「関連語」や「ガイド」から検索語の候補が選べる。「体系目次検索」により法条や論点から判例検索が可能。検索結果の書誌最上段に「解説」とあれば『判例タイムズ』の解説全文が読める。
新聞やテレビなどで使われる通称事件名から判例を探すには、新聞記事データベースを利用して判決年月日と裁判所を特定したのち、法律系データベースで判例検索を行うのが効果的です。例として、青色LEDの職務発明に対する対価などについて争われた、いわゆる「青色LED訴訟判決」について、判決年月日がはっきりわからず、判決に関連するキーワードが「青色LED」程度しかわからない場合には、サーチエンジンを使った検索では、検索結果が大量に出てしまい絞り込みに苦労する、信頼性の低いサイトも含まれてくるといった短所があります。
判例や判例登載雑誌が『民集』『刑集』や、『判タ』『判時』のように略号で引用されていて、その正式名称がわからない場合は、略語表を利用する。『法律学習マニュアル/弥永真生』、『リーガル・リサーチ/いしかわまりこ』などで調べられる。また、以下のウェブサイトでも参照可能。
公的判例集は裁判所ウェブサイトの「裁判例情報」での公開が進み、冊子体の多くは販売されない部内資料のみとなりましたが、ウェブサイトには公開されない情報が含まれています。ここでは現在も刊行中の判例集のみ紹介します。
昭和22(1947)年以降の判例が「最高裁判所判例集」に、民事の部と刑事の部として収録されている。図書館では、民事事件・行政事件を「最高裁判所判例集.民事」に、刑事事件を「最高裁判所判例集.刑事」に分けて製本している。裁判所ウェブサイトや契約データベースでは公開されない、当事者名、上告理由書、原審・原原審が読める。
昭和28(1953)年以降の判例が「東京高等裁判所判決時報」に民事の部と刑事の部として収録されている。図書館では、民事事件・行政事件を「東京高等裁判所判決時報.民事」に、刑事事件を「東京高等裁判所判決時報.刑事」に分けて製本している。
昭和24(1949)年以降の家事事件・少年事件の裁判例、論説・研究、通達・回答、資料を収録。1号のタイトルは『家庭裁判所月報』。巻末に索引あり。
昭和30(1955)年以降の民事・行政・租税事件の判例を収録。毎年1号別冊に前年の回顧と索引あり。
判例全文を掲載する判例登載誌には、出版社によって選択された判例が収録されますが、公的判例集に収録される数よりも多く、収録もより早いことが特徴です。また、解説(判例評釈)が付されているため、判例の学習に便利です。判例登載誌の代表的なもののごく一例を、以下に紹介します。
法律総合誌
分野別雑誌
判例について、研究者や実務家が解説したり論評を加えた、判例評釈や判例解説は、法の解釈や適用上非常に大きな位置を占めているもので、法の学習や研究には欠かすことができないものです。判例評釈や判例解説が主に掲載される雑誌をご紹介します。
最高裁で、その事件を担当した最高裁判所調査官が執筆している判例解説集である『最高裁判所判例解説』の重要性は高いと言われています。これは、まず『法曹時報』という雑誌に毎月掲載され、1年分をまとめて刊行しているものです。直近1年の最新のものは『法曹時報』を見る必要があります。『最高裁判所判例解説』も『法曹時報』もデータベースでは利用できないので、冊子体を見る必要があります。
毎月『法曹時報』に掲載され、1年分がまとめられ刊行される判例解説集。 最高裁判所調査官が執筆し、その解説は重要性が高いとされる。まだ刊行されていない直近1年の最新のものは『法曹時報』を利用しなければならない。『最高裁判所判例解説』も『法曹時報』もデータベースでは利用できないので、冊子体を参照する必要がある。
『ジュリスト』の「時の判例」や『法律時報』の「最高裁新判例紹介」にも最高裁判所調査官による解説が掲載される。
数々の判例評釈を掲載する法律雑誌がありますが、ここでは総合誌を紹介します。分野に特化した判例評釈を載せる雑誌もあります。また電子ジャーナルでも利用できるもの、冊子でしか利用できないものがあるので、注意してください。またそれぞれに別冊や増刊があることにも注意が必要です。